イタリア語万華鏡31 『 マンホールの蓋 』
2012年 02月 11日
31 『 マンホールの蓋 』
ローマの街を歩いていると、点在する多くの広場のせいで、交差点の
構造が複雑を極め、三叉路どころか五叉路にも六叉路にもなっている
箇所がある。
したがって、どの信号を見て進むべきか迷うこともしばしばである。街並
保存優先のために市内の駐車場は極端に少ない。当然、車も二重三重
に路上駐車していてすぐに渋滞するし、見通しの悪いことこの上ない。
さて、路上に目を移すと、あちこちに上下水道のマンホールが見える。
蓋の上には「S.P.Q.R」の文字が書いてある。何の略号だろうかと調べて
みたら、セナートゥス・ポプルス・クエ・ローマーヌスSenātus Populusque
Rōmānus「元老院とローマ人民」ということで、これは古代ローマにおける
共和制の成立を記念するラテン語の文言であり、今やローマ市の紋章と
なっている。(Senātusは「元老院」、Populusは「人民」、-queは接続詞
「~と」、RōmānusはPopulusを修飾する形容詞「ローマの」)。
-queは英語であればandに相当する構成要素であるが、Senātusと
Populusとの間には入らないで、Populusに接尾されている。
つまり、「A and B」ではなくて、「A B-and」という構造になっている。
これと同じ構造は古代ギリシャ語や古代インドのサンスクリットにも見られる。
フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂(1244~1360建立)
こちらから1~すべての記事が読めます↓
カテゴリ:イタリア語万華鏡 古浦敏生
古浦敏生(こうら・としお)
広島日伊協会理事 故マリーザ・バッサーノさんよりイタリア語を学ぶ。
広島大学名誉教授。言語学専攻。