イタリア語万華鏡 古浦敏生

イタリア語万華鏡35 『 言語のヤヌス性と阿修羅性  』

055.gif  『イタリア語万華鏡』 古浦敏生より 

35 『 言語のヤヌス性と阿修羅性 』

2009年9月3日(木)、筆者は九州国立博物館(於大宰府)で開催中の
「阿修羅展」を、妻(祐子)と義妹(石井しづせ)との三人で鑑賞した。
今回は興福寺創建1300年記念展であった。ウイークデイだというのに
博物館前は長蛇の列で、入館までに1時間もかかった。
新型インフルエンザ流行のためマスクをしている客が多かった。
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この像はもともと奈良の興福寺が所有している国宝で、天平の美少年
なのであるが、顔が三面、手が六本ある。顔は三面とも同じ少年である
が、正面はまじめな表情に見える。
しかし、向かって左側の顔は眉を寄せ、唇をかみ締め、少し腹を立てて
いるように見える。向かって右側の顔も正面の顔と比べるとやや厳しい
表情である。今回の展示はガラス張りではなくて、しかも、ぐるりと後側
まで見ることができた。素晴らしい出来栄えである。
見ているうちに、昔、恩師の関本至(せきもと・いたる)先生(広島大学
名誉教授)が、言語のヤヌス性について話しておられたことを思い出した。
古代ローマの神ヤヌスJanusは、英語Januaryの語源であることから
も想像できるように、1月の神であり、物事の始まり・入口の神であって、
反対向きの二つの顔を持っている。先生のお話は“言語は、ヤヌスのよう
に、対立する二面を有している。すなわち「話し手の側vs聞き手の側」・
「音vs意味」・「口語vs文語」・「共通語vs方言」。”という内容であった。
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シエナのカンポ広場(中央正面はプブリコ宮、1297~1342建立)

筆者は阿修羅を見ているうちに、言語にも「1人称vs2人称vs3人称」・
「能動vs中動vs受動」・「男性vs女性vs中性」・「現在vs過去vs未来」・
「自動詞vs他動詞vs再帰動詞」という三つの面があるし、「全体を捕まえ
ようと思っても、六本も手があるので、逆に捕まえられて虜にされてしまう
こと」、「筆者も40年くらい言語研究の虜になっていること」などを勘案
すると、阿修羅も言語に似ているのかナとの思いが湧いてきた。

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カテゴリ:イタリア語万華鏡 古浦敏生

古浦敏生(こうら・としお)
広島日伊協会理事 故マリーザ・バッサーノさんよりイタリア語を学ぶ。
広島大学名誉教授。言語学専攻。
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by hiroshimaitaly | 2012-03-22 18:59 | イタリア語万華鏡 古浦敏生 | Comments(0)

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