イタリア語万華鏡8 『 ティラミスと「おたべ」 』

055.gif  『イタリア語万華鏡』 古浦敏生より 

8 『 ティラミスと「おたべ」 』

いつだったかサルモネラ菌が混入する騒ぎもあったが、依然女子大生に人気の
ティラミスtiramisù。

これはイタリア語である。

チーズの中で最も脂肪分の多いマスカルポーネに、砂糖・卵黄・生クリーム・
ココアパウダーを加えて冷やし、固めたケーキのことである。カロリーが非常
に高く、ダイエット中の方にはお奨めしかねる。
このtiramisù、「ティーラ tira」と「ミ mi」と「ス su」の三つの要素から成り立って
いる。tiraは「お前は引張れ!」、miは「私を」、suは「上へ」という意味で、全体
としては“お前は私を上へ引っ張れ!”すなわち、“(私は今からお前(=ティラミス)
を食べるから)、お前は私を元気に(=ハイな気分に)してくれ!”という命令文である。

 さて、命令文がお菓子の名前として採用されているのは非常に珍しいことである。
甘党の筆者が食した日本のお菓子をいろいろ思い浮かべてみても、…白い恋人、
ずんだ餅、草加煎餅、東京ばなな、長生殿、羽二重餅、赤福、埋もれ木、瓦煎餅、
若草、柚餅子、黍団子、もみじ饅頭、柿羊羹、外郎、一六タルト、ひよこ、梅が枝餅、
朝鮮飴、カステラ、かるかん、ちんすこう…命令文の名前はなかなか見つからない。

しかし、「おたべ」があった。京都銘菓、つぶあん入り生八つ橋である。
イタリア語のtiramisùと日本語の「おたべ」を比較してみると、ともに命令文である
という点は共通している。
しかし、tiramisùの場合はお菓子に向かっての命令であるのに対して、「おたべ」
の場合は食べる人間に向かっての命令である。文化の差はこんな微妙なところにも
現われている。

追記:“「上へ引っ張れ!」を「(口元まで)引っ張り上げよ!」と解釈して、「私を」
の主体をtiramisùとし、人間に向かって「私を(あなたの口元まで)引っ張りあげて
(食べてください)!」と、お菓子が人間にお願いしている”とする向きもあるようだ。

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写真:ヴェネツィアのサン・マルコ広場の夕景
(遠くサン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂を望む)


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カテゴリ:イタリア語万華鏡 古浦敏生

古浦敏生(こうら・としお)
広島日伊協会理事 故マリーザ・バッサーノさんよりイタリア語を学ぶ。
広島大学名誉教授。言語学専攻。
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by hiroshimaitaly | 2011-10-07 22:27 | イタリア語万華鏡 古浦敏生

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