イタリア語万華鏡21 『 反意併存 』
2011年 12月 17日
21 『 反意併存 』
同じ音形の語でありながら、反対の意味を共有している奇妙な場合がある。
たとえば、イタリア語の動詞フォンデレfondereには「鋳造する」と「溶解する」
の両方の意味がある。したがって、フォンデレ・ウーナ・カンパーナfondere
una campana(unaは不定冠詞、campanaは「鐘」)といった場合、「鐘を
鋳造する」のか「鐘を溶解する」のか、文脈で判断するほかない。
また、ウーナ・ヴォルタuna voltaには「かつて」という過去の意味と「いつか」
という未来の意味とが併存している。
日本語にも似た現象がある。たとえば、「誠におめでたい話である」の「おめで
たい」は「喜ばしい」という良い意味であるが、「あいつはおめでたい奴だ」の
「おめでたい」は「間抜けな」という悪い意味である。また、「着いてみると彼は先に
来ていた」の「先」は「それより前」という意味であるが、「着いてから先のことは
まだ決めていない」の「先」は「それより後」という意味である。
写真:パドヴァ(中央はサン・アントニオ聖堂、1232~1307建立)
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カテゴリ:イタリア語万華鏡 古浦敏生
古浦敏生(こうら・としお)
広島日伊協会理事 故マリーザ・バッサーノさんよりイタリア語を学ぶ。
広島大学名誉教授。言語学専攻。