イタリア語万華鏡38 『 郵便局と切手 』
2012年 04月 16日
38 『 郵便局と切手 』
イタリアの郵便局員は、日本人のような勤勉さでは働かない。
とりわけ、クリスマスが近くなると、その程度がひどくなる。
窓口は長蛇の列なのに、局員は私語をしたりして捗らないこと
甚だしい。
それでも、市民は“ポーヴェラ・イターリア!Povera Italia!
「イタリアは貧しい!」”と言いながらも辛抱強く順番を待っている。
イタリア人には切手愛好家が多い。ホテルやレストランで、チップ
代わりに日本の使用済み郵便切手を数枚プレゼントすると、“私も
切手を集めている”とか、“私はコレクターではないが、叔父が集め
ている”とか言って、大層喜んでくれる。(ほかの箇所でも触れて
いるように、フィレンツェ大学で学生証を貰ったときも、フィレンツェ
の時計屋で修理を頼んだときも、シチリア島のパレルモ空港で
トランクが届かなかったときも、この方法が功を奏したのである)。
大都市には切手の専門店があり、切手カタログも販売されている。
イタリアの作家エドモンド・デ・アミーチスEdomondo de Amicis
(1846~1908)の愛国小説『クオーレ物語』(クオーレcuoreは
「心」という意味)には、以下のようなエピソードが掲載されている。
すなわち、「切手コレクターの少年ガロッフィが雪合戦をしている
うちに、投げた雪玉が誤って老人の目に当り、その老人は入院・
治療することとなった。
当初は、あやまちを白状し名乗り出る勇気のなかったガロッフィ
であったが、泣いてお詫びをし、老人から許しを得た。
後日、ガロッフィはお見舞に行き、許してもらったお礼に自分の宝物
である切手アルバムを差し上げた。その後、目が快復した老人は、
ガロッフィの真心に打たれ、そのアルバムに幾つかの切手を追加
してガロッフィに返還した」。
こちらから1~すべての記事が読めます↓
カテゴリ:イタリア語万華鏡 古浦敏生
古浦敏生(こうら・としお)
広島日伊協会理事 故マリーザ・バッサーノさんよりイタリア語を学ぶ。
広島大学名誉教授。言語学専攻。